英語にカタカナをふって覚えて大丈夫?!
最近、公立小学校で英語を教えている方から、こんなごご質問をいただきました。
英語にカタカナをふっても良いのでしょうか?
その方は、子どもたちが簡単な英語の対話を練習する際に、ALT(ネイティブの先生)の発音を
聞いても忘れてしまう子がいるため、黒板に英語を書いて、その上にカタカナを書いても大丈夫かという内容でした。
結論からいうと、私はお勧めしません。
理由は、シンプルに、
「英語はカタカナで表すことはできない」からです。
わかります、カタカナを書きたくなっちゃう気持ち。きっと、
- 子どもたちに英語を読めるようになってほしい
- 限られた授業時間(週1回など)の中で英語を覚えさせたい
- 書いてある英語が読めないと、口頭練習しづらいのではないか
- 子どもに読み方を聞かれて毎回一人一人に対応するのは大変
こんな思いからくるものではないでしょうか?
私も小学生を教えていて、このように感じた時期がありました。
でも、小学生を教えて5年目。
クラス全体の前で黒板にカタカナを書くことは、まずありません。
中には、教えなくても、子どもが自ら、英文にカタカナを振っている姿を目にすることが
ごくたまーにあります。(今までで見たのは5人くらい?)
その子たちに共通しているのは、
「Input量が足りておらず、自ら英語の音のルールがまだ理解しきれていない」ことです。
このような場合には、個別指導の際に、完全に「No!」とは言わず、どうしても読めない単語の上だけにカタカナをふって良いとして、でも読めるようになったら消すことと伝えています。
もし全部カタカナで覚えてしまったら、それは英語として伝わらず、結局何のために練習しているのか、
わからなくなってしまいます。
また、先生が、クラス全体の前で、英語にカタカナをふってしまうと、
子どもたちは、英語はそうやって学習するんだと勘違いをしてしまうかもしれません。
理想を言えば、(小学生のうちに)「英語を英語の音」として読めるようになってほしいと思います。
今英語は世界中で話されていて、それぞれの国にそれぞれのスタイルの英語が存在します。
いわゆるネイティブの中にも訛りが多く存在します。(日本にも関西弁、東北弁があるように)
英語話者の人口をみてみると、非ネイティブの方がずっと多く、これかもどんどん増えていくと
考えられています。
だとすると、以前のように、完璧にネイティブ発音を目指す必要はないと思います。
でも、発音のせいで伝わらないというのは残念ですし、
小学生から英語を始める最も大きなメリットは、発音やリスニングにとても効果があるということを
考えると、発音を妥協してはいけないと思います。
ではでは、どうしたら子どもたちは、英語を上手に読めるようになるか・・
まずは、理想から言うと、
- 大量の意味のあるインプットがある(ただの英語のシャワーではダメ〜Inputの質のはなし〜 - Chocolate box★小学校英語奮闘記をご覧ください♪)これを専門的に、top-downといいます
- アルファベットを、音の最小限の単位の音素に分けて、発音練習をする(bは[b]、pは[p]という音)これをbottom-upといいます。
これらの中で、子どたちは、英語のルールを見出していきながら、まとまった内容をそのまま覚える力と単語レベルで読めるようになる力を身につけていきます。
私の授業では、1. 大量の意味のあるインプットは、絵本を通して与えることが多いです。
絵本には、内容があって、場面と人物関係があります。その中で、繰り返しでてくる表現などを、
子どもたちは、自然とまとめて覚えてしまいます。
ポイントは、
最初から字を見せず、だいたい言えるようになってきた段階で文字を見せることです。
最初から文字を見せてしまうと、子どもたちは文字ばかりに気をとられて、肝心な耳から入ってくる音や、
発音している人の口元を見ることを忘れてしまいます。
何度も繰り返し読み聞かせをしているうちに、
子どもたちは、文字を見なくても、言えるようになってくるのです。
そして、だいたいクラスの8割か9割が言えるようになったら、
文字を見せると、ものすごく集中して文字を目で追います。
きっと子どもたちは、「へーあの発音はこうやって書くんだー」など気づきを得ていると思います。
これらの蓄積で、よく目にする単語は自然と読めるようになっています。
2. の発音練習に関しては、細かいことを書くととても長くなってしまうので、ざっくり言うと、
低学年の時から、アルファベットに親しむ活動を始め(アルファベットカルタなど)、
Aa~Zzまで大文字・小文字問わずたくさん目にする機会を与えます。書く練習もします。
そして、中学年で、Aの発音は、[a]、Bは[b]などといった音の読み方を練習し、アルファベットに色々な読み方があることを練習します。
高学年では、中学年で学んだことを繰り替えしながら、単語を耳で聞いてスペルを推測する練習をします。
三文字の単語は、ほとんど全員書けるようになります。それより長い単語も少しずつ挑戦します。(今教えている子達は、この練習が大好きでやらないとブーイングがきます、笑)
このような、top-downとbottom-up の活動の中で、子ども達は自然と英語のルールに気づき、
学んでいくように感じます。
でもでも、こんなの理想で、まず何から手をつけたら良いか、わからないーって声もわかります。
なので、私は質問してくださった方には、以下のようにお答えしました。
***************************************************
やはりなんといっても、「正しい発音の英語をたくさん聞くこと」だ大事だと思います。
「正しい」というと、なかなか教えるのが難しく思えるかもしれません。
その場合は、ネイティブの先生にお願いをして、音声、できたら、顔をアップにしたムービーを撮らせてもらうといいと思います。そして、日本人の先生もそれをみてポイントを掴んで、
授業で子どもたちに練習させる前に、本人が見本を見せてあげることが大事だと思います。(できたら最初からムービーは見せずに、生でやってから、ムービーで確認する)
もう一つ、大事なのは、発音だけでなく、抑揚やリズムのつけ方です。
私はよく、体を使ってしゃがんだり立ったりして抑揚を表したりとか、手拍子でリズムを練習したりします。
高学年は書いてある文に、強く読む箇所を記入させたりします。
気をつけないと、日本人は、英語を日本語と同じように、フラットに読んでしまう傾向があるので、
それは小学校のうちに、英語と日本語は違うってことを気づかせてあげられると良いと思います。
****************************************************
どうしても、発音ばかりに目がいきがちですが、それ以上に伝わるために大事なのは、「抑揚・リズム」です。
小学生のうちに、これらを体験できることが理想です。これらについても、いつか具体的な指導法を書いてみます!
大人がカタカナをふりたくなってしまうのは、きっと「早く」言えるようになってほしいという思いがあるかもしれません。
でも、大学院に行ってから、痛感するのは、言葉ってそんな早く、身につくものではないんですよね〜。
ゆっくり丁寧に育ててあげられる余裕が、大人に社会に必要だなーって感じます。
参考文献:「小学校英語の教育法 理論と実践」 アレン玉井三江著